研究概要 |
本研究では,ネットワークリソースを市場原理(オークション)に基づいて公平かつ効率的に割り当てるプロトコルを,その実装に向けて評価することを目的とする.特に今年度は,その基礎的検討を行った.P2Pや分散センサネットワークなどのアドホックなネットワークにおけるデータ転送では,個々の端末(ノード)はその所有者や規格が異なることが起こりうる.この場合,各ノードにデータを適切に転送するための誘因(報酬)を考慮しなければならない.このような報酬の決定にはしばしばオークションプロトコルが用いられる.そこで従来のプロトコルでは,あるノードが架空のノードを用いる,または他ノードと共謀することで,不正に報酬を獲得できることを明らかにした. 一方で,これまで担当者らが設計してきたプロトコルの適用の検討を続けている.アドホックネットワークにおけるデータ転送では,経路探索と報酬の設定の両方を扱わなければならない.従来プロトコルでは単に経路探索を最適化することを前提にできたが,本研究が想定する不正行為のもとで最適な経路決定を達成することは不可能となる.このため,これまで開発してきたプロトコルが利用可能な準最適な経路決定方法が必要となることがわかった. また実際のネットワークでは,各ノードで取得可能な情報に基づいてどこからデータを受け取るべきか(送るべきか)を決定する必要がある.これは,入札可能な対象(サーバなど)が複数あるときに,適切な入札箇所をある程度推定することに相当する.今期は,このような想定の下,推定戦略やその学習方法により,効率性を求めた集中もしくは公平性のための負荷分散が行われることがわかってきた.さらに,トラフィックの変動要因を導入した実験を試みがさらに必要であることも分かってきた.
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