研究概要 |
生物あるいは機械システムの運動制御において,知的行動生成を行なう制御メカニズムの解明は非常に重要な課題の一つである.知的行動生成とは,与えられたタスクに対して,自己が移動することに伴い刻一刻と変動する環壌および自己の置かれた状況をある種の外界センサ入力をもとに知覚し,行動計画を立て,自分の置かれた環境に適応した行動をリアルタイムで実現する制御系を指す. 著者はこれまで,歩行機械をテストベッドとして,自発的運動制御に関する研究で自律的歩行制御系のモデルの構築を行ってきた.すなわち,環境及び与えられた歩行条件への歩行パターンの自律的な適応メカニズムを振動子系と筋肉骨格系から構成される力学系のパターン形成および分岐現象として捉え,変動する歩行条件にリアルタイムで適応する運動制御系モデルを構築してきた. 著者が構築してきた自発運動制御系モデルの解析から,提案するモデルから発現する運動パターンには,環境あるいは与えられた運動への境界条件に応じて,非常に多くのパターンが内包しており,状況依存で自律的に妥当なパターンが選択的に発現していることが解明されてきた. 本年度研究ではこれらの結果を踏まえ,歩行運動における環境による拘束下での行動パターンの選択的発現および運動パターンの調整のメカニズムを有する制御系モデルの提案を行なった.提案した歩行制御系モデルを用いて,先験的にプログラムされた行動様式あるいは,制御方策の切り替えを行なうことなく自己の置かれた環境や行動条件に合わせた自律的運動パターンの生成を実現した.さらに,振動子間の位相差を最適化状態変数とし,歩行デューティー比を最適化問題のパラメータとした最適化計算により,様々なデューティー比に対する最適歩行パターンを数値的に求め,四脚歩行ロボットにおいて歩行条件が変化した際に様々な最適歩行パターンが発現することを明らかにした.また,同様の制御系を用いて,空気圧駆動型人工筋肉アクチュエータにより駆動される2脚歩行ロボットも,準受動的歩行を安定に実現できることをハードウエア実験により検証した.
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