研究概要 |
Sperlingらにより提案された昆虫の視覚モデルであるERD(Elaborated Reichardt Detector)動き検出器による動き検出アルゴリズムにつき、アルゴリズムを規定するパラメータを最適化することにより動きベクトルを推定する手法を検討した。ERDはEMD(Elementary Motion Detector)と同様、その低計算複雑性により、リアルタイムで動き方向を検出できるばかりか、動き方向を誤って検出するエイリアシング問題を回避できるメカニズムも備えている。したがって、EMDよりもERDの方が動き検出器としては有用性が高いと言えるが,ERDにより検出できるのは動き方向のみで,動きの速さ,即ち,動きベクトルの大きさ推定は研究対象とはされずopen issueとなっている。そこで、本研究では、動きベクトルの大きさも推定できるよう検討を行った。 具体的には、ERDを構成する時間遅延フィルタのパラメータおよび空間エイリアシングを防ぐための空間フィルタのパラメータを同時に最適化を行うことにより、動きベクトルの方向のみならず大きさをも推定できることを理論的に確認することができた。アルゴリズムをコンピュータプログラムに実装し、アルゴリズムの有用性を検証した。2次元グリッドが構成する探索空間上でパラメータを最適化することにより,ERDパラメータが最適化され,動きベクトルの方向と大きさを推定することを確認することができた。 上記研究とあわせ、EMDをアナログ回路に実装する検討も行った。EMDに含まれる演算をすべてアナログ処理により実効することで、EMDに基づいた動き検出センサの高速化と簡易化を試みた。アナログ回路を構成する素子の周波数特性が動き検出結果の精度に大きく影響を与えることが分かった。
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