研究概要 |
1.運転負荷を与えた場合の高齢ドライバの「感覚・知覚」機能の測定技術の開発 高齢ドライバによる事故の多くは,本人が自分の運転能力(視覚などの「感覚・知覚」機能と「認知・判断」機能)の低下に十分気づいていないことが主原因と言われている.まず,運転能力のうち運転中に必要な視覚を検討し,運転との関係から視野,動体視力,深視力(まとめて運転視力とよぶ)に着目した. 運転操作しながら(運転模擬状態で),複数の運転視力を1台のシステムでまとめて測定する方法,およびその方法を実現するシミュレータ(運転視力測定システムとよぶ)を試作開発した.このシミュレータは,運転操作部(ステアリング,アクセル,ブレーキ),円筒型スクリーン(水平視野角140度),プロジェクタ3台(運転模擬映像表示1台と運転視力の視標表示2台),処理装置から構成される. このシミュレータを用いて高齢者(60代)と若年者(20代)の運転視力を測定した結果,高齢者は若年者に比べて,運転操作したときの視野が著しく狭くなること,動体視力や深視力が有意に低下することを定量的に示すことができた.高齢ドライバに運転視力低下を自覚してもらう上で極めて有効であり,次年度はメーカと共同で自動車教習所などへ導入するためのプロト機を開発する予定である. 2.運転負荷を与えた場合の高齢ドライバの「認知・判断」機能の測定技術の開発 一般の高齢者の事故に加えて認知症の高齢者の事故が増え,免許証の更新が大きな問題になっている.認知症の早期発見を主眼として,上記1)の運転視力だけでなく運転での認知・判断力を測定し,認知症を含む高齢ドライバの運転適性に活用できるシステムを目指す.これまでの高齢者(認知症を含む)の事故分析,研究事例などを調査し,新しい認知・判断力測定・評価方法の基本方針を作成した.次年度は,この方法を踏まえた試作システムを構築する予定である.
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