研究概要 |
1)運転負荷を与えた場合の高齢ドライバの「感覚・知覚」機能の測定技術の開発 運転時に不可欠な視覚機能(有効視野,動体視力,深視力)に加え,高齢者に特有な老人性白内障(老化で発症し,60代で70%の人に著しい視力低下が認められる)の静止視力を測定する方法を開発した。高齢者(60代)と若年者(20代)の評価実験の結果,高齢者は若年者に比べて,低コントラストの対象やグレアとなる光源がある場合に静止視力が顕著に低下することが分かり,この測定によって白内障の程度を推定できる可能性が得られた.視覚機能全般にわたる評価実験により,高齢者の安全運転に最も重要な視覚機能として,有効視野と静止視力(低コントラスト対象,グレア環境)の二つを抽出し,メーカと共同で自動車教習所などへ導入するためのプロト機を開発した.次年度は,このプロト機を自動車教習所などで試行し,高齢者の視覚機能のデータベース化と課題抽出を行う予定である. 2)運転負荷を与えた場合の高齢ドライバの「認知・判断」機能の測定技術の開発 これまでの高齢者(含む認知症)の運転行動や諸特性を調査・分析し,高齢者の認知判断機能を測定・評価する新規の方法を開発した.これは,高齢ドライバの認知判断機能が低下して事故を起こしやすい日常の運転場面を作成し,その運転場面を組み込んだ運転シミュレータでの運転成績を測定することにより認知判断機能を評価する方法である.年代別(高齢者は80代まで含む)の評価実験の結果,加齢に伴う認知判断機能の低下を測定・評価できる見通しが得られた.次年度は,健常な高齢者だけでなく,認知症ドライバの危険な運転の予測と認知症患者の早期発見を主眼として,この方法を踏まえた測定システムを試作開発する予定である.
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