コミュニケーション制御機構を実現するための非常に大きな課題である「意図状態推定」問題に取り組んだ。視線、対人距離、確認動作を利用しインタラクションの中で確率推論に基づき意図状態推定を行い、意図推定確率の時系列変化曲線の特性に基づき意図理解・意図獲得を行う方式を提案した。具体的には、意図状態推定確率の時系列変化曲線を以下の3つのパターンに分類し解析を行った。 (1)最新意図選択:意図不明確率を超えた最初(最大)の意図を選択するケース (2)意図理解型選択:意図状態間の論理的・因果関係を解釈してから選択するケース (3)意図予測型選択:意図状態間の論理的・因果関係を用いてイベントが発生する前に予測して選択するケース 提案方式の有効性を確認するために、研究室において「モノ」を探すや「人」を探すというイベントを取り上げ、ロボットが、「探そうとして困っている」や「頼みたい」という人間の意図を推定できるかどうかを検証した。ここでは、1対1のコミュニケーションだけでなく、複数人がコミュニケーションしている中に割り込んでコミュニケーションを行うケースも想定した。約90%のケースで、推定された各意図の状態変化が人間の実際の意図変化と合致しており、距離、視線、確認動作のコミュニケーション属性による確率推論がうまく動作し、意図をインタラクションの過程の中で獲得できていることを確認した。また、コミュニケーションロボットの動作や人間の行動履歴を入力することにより、インタラクションプロセスを考察できるロボットインタラクション・シュミレータを開発し、検証に用いた。
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