研究概要 |
少子高齢社会では、高齢者の生活の安全、認知症の予防が最重要課題である。本研究では、口腔機能およびバイタルサイン情報の無意識・無拘束モニタリング技術とそれに基づく認知症初期段階での健康回復法の確立を目指す。本年度は、次の2点について研究を行った. (1)口腔機能センサとバイタルサインセンサを組み込んだ無意識・無拘束計測技術の開発:本研究では、ネックバンドにバイタルサインセンサ(心電図、心拍数、血中酸素飽和濃度)と嚥下音をモニタリングする口腔音センサの各センサを組み込んだ無意識・無拘束モニタリングシステムを開発する。生体用電極(ペースト不要)を介して首に付けるだけで心電図計測ができ,計測した心電波形からR-R間隔,心拍数が精度よくモニタリングできることを実験で確かめた.また,嚥下時の舌の発生力と嚥下音の関係を計測することに成功した. (2)口腔音(会話、笑いの頻度)の無拘束センシング(爆笑計):頚部に密着させた咽喉マイクロホンから得られた発話時の声帯振動音を分析し、発話時間を計測する。爆笑の場合、「ワッハッハ」というように発声音が繰り返される特徴から、この音節の繰り返し周期の平均値の標準偏差を特徴量とすることで、会話中から90%の精度で爆笑を検出できることを確認した.また,年齢による笑い声の特徴を分析するために,10才から90才までの男女32名について笑い声を収集し,笑い声の音節区間を調べ,年齢と共に音節区間が長くなる傾向があることを明らかにした.さらに,京都府精華町ケアハウス「神の園」の60才から90才までの高齢者14名のご協力を頂き,漫才などのDVD鑑賞時の笑いとストレスを測定した.その結果,漫才などを見て笑いことに対して好評であり,4回の実験で回をますごとに参加者が増える結果となった.本データは,認知症予防のための笑いセラピーシステムの設計の基礎データとなると考えられる.
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