研究概要 |
本研究計画は,量子力学的ゆらぎを確率推論に取り込んだ,いわゆる量子ベイジアンネットシステムの設計理論の基盤の整備を行い,実用化への可能性を探ることを目的とする.この目的を達成するために,「確率推論を定式化する枠組みとしてのベイズ統計の量子力学的確率推論への拡張」,「量子力学的確率伝搬法の定式化と具体的アルゴリズムにおける収束性」,「自動車運転中の運転者の行動予測・危険回避システムへの適用に向けての基盤整備」の3点を明らかにする.本研究計画は,近年,研究の活発化している量子情報処理を量子確率推論へと発展させる試みである.本年度は主として従来のベイジアンネットワークアルゴリズムに量子力学的効果を組み込む理論的定式化についての検討を行い,「確率推論を定式化する枠組みとしてのベイズ統計の量子力学的確率推論への拡張」の部分についてほぼ当初の目的を達成した.そのために統計力学における量子確率場に対するクラスター変分法の理論的再検討を行い,これを量子確率伝搬法として拡張し,具体的な量子ベイジアンネットワークとして定式化する理論的基盤整備を行った.その際,従来のベイジアンネットワークで可能であったメッセージ更新規則が量子確率場の導入により量子ベイジアンネットワークとして具体的にどのような変更が必要となるかについて明らかにした.本年度内にその基盤整備は達成されつつあり,その最新の進展状況は科研費特定領域研究「確率的情報処理への統計力学的アプローチ」公開シンポジウム「確率推論の数理」(2005年12月19日-20日)において講演「量子情報処理にむけてのクラスター変分法と確率伝搬法の定式化」として公開している.
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