研究課題
「(等間隔リニアアレイを用いた)高分解能到来方向分布推定問題」(任意に指定された方位区間から到来する信号の数を推定する問題)は、無線通信、音声・音響・超音波処理、地震波工学、レーダ工学、医用工学などに多くの応用を持っている。観測信号ベクトルの自己相関行列が与えられる場合、各信号の到来方向は、「複素自己反転多項式の単位円周上の全極小値探索問題」、の解として特徴付けされることが多い(MUSIC法など)。また、「複素自己反転多項式の単位円近傍の全零点の偏角値推定問題」の解として特徴付けることにより、検出洩れの可能性を抑えられることがわかっている(Root-MUSIC法など)。従来の「到来方向分布推定問題」は、いずれも、これらの解の逐次近似解を指定された区間で数え上げる方針に基づいており、本来「到来方向分布推定問題」に要求されない「全ての信号の到来方向の推定」に大半の計算コストが費やされていた。本研究では、「到来方向値の推定」を回避することにより、「任意に指定された方位区間から到来する信号数」を有限回の四則演算で、直接推定可能とする2つの「代数的高分解能到来方向分布推定法」を提案している。2つの推定法は、いずれも「代数的連続位相復元法(Yamada et al. '98 & '02)」の拡張を利用したものである。第1の推定法では、複素多項式の「自己反転性」が単位円周上の偏角に関する微分によって保存されるという基本的な性質を利用し、「代数的連続位相復元法」を一般化することにより、「複素自己反転多項式の単位円周上の極小値条件」の数え上げを実現する特別なスツルム列を導出している。任意に指定された方位区間から到来する信号数は、両端点におけるスツルム列の符号変化数から直ちに推定される。また、第2の方法は、「(複素関数論の)偏角の原理」を利用する方針に基づいており、原点を中心とする偏角に関する2つのスツルム列と任意に指定された方位区間の両端点方向に原点から放射された直線の距離に関するスツルム列を用いて、「複素自己反転多項式の"複素扇形領域内の零点"の数え上げ」を有限回の計算で実現している。任意に指定された方位区間から到来する信号数は2つの"複素扇形領域内の零点数"の差として直ちに推定される。第2の方法は、第1の方法に比べ、計算コストの増加を招くものの、信号検出を見逃す可能性を抑えることができる特徴を有している。更に、2つの提案手法に対し、ゼロ書き換えに基づいた精度保証付き区間演算法(Shirayanagi & Sekigawa '97)を組み合わせ、従来のスツルム列生成アルゴリズムの引き起こす係数爆発の問題を回避しながら、数値安定化するアルゴリズムを計算機上に実装し、実際に10^{-8}度の方位区間幅が指定された到来方向分布推定が厳密に算出できることを数値例で確認している。(注:ここでご紹介したのは本研究のごく一部であり、関連する多岐の問題に発展している。)
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Proceedings of 2005 IEEE International Symposium on Circuits and Systems, (Special Session---Multidimensional Systems and Signal Processing) INVITED (CD-ROM)
ACSM 2005 : Asian Symposium on Computer Mathematics, Korea Institute of Advanced Study, Seoul, Dec., 2005.
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Proceedings of SITA 2005 (CD-ROM)
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Technical Report of IEICE SIP2005
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Proceedings of IEICE SIP Symposium 2005 (CD-ROM)