研究概要 |
「代数的連続位相復元に基づいた高分解能到来方向分布推定問題」(任意に指定された方位区間から到来する信号の数を推定する問題)の基本原理の確立と有効性の検証については、初年度中にほぼ決着をつけることができたため、2006年度には、到来方向推定によって獲得されるチャネル情報を活かした「MIMO直交時空間符号システムの多元接続干渉抑圧問題への応用」とそれを支える学習則(適応射影劣勾配法)の一般化について検証した。 1.適応射影劣勾配法を用いたMIMO直交時空間符号システムの新しい多元接続干渉適応抑圧法 到来方向推定法は、無線通信システムのチャネル推定に利用することができる。チャネル情報を積極的に利用した無線通信システムとしてMIMO直交時空間符号システムを取り上げ、多元接続干渉の高速な抑圧を実現する適応受信機を提案している。この受信機は、適応射影劣勾配法を用いて複数の観測情報を同時に利用することにより干渉抑圧フィルタの優れた収束性能を実現しており、従来の多元接続干渉適応抑圧法に比べて遥かに小さなビット誤り率を達成することに成功している。 2.適応射影劣勾配法の一般化とその応用 適応射影劣勾配法は、凸関数列の漸近最小化を実現するアルゴリズムとして申請者らによって提案され、射影型の適応フィルタリングの各種アルゴリズムの統一原理となっている。これまでに音響エコー消去問題、アレイアンテナの適応ビーム形成問題、無線通信システム(DS-CDMA, OSTBC-MIMO)の多元接続干渉抑圧法など多岐に渡って応用され、いずれの応用でも目覚しい効果が確認されている。本研究では、非拡大写像の不動点集合上で凸関数列の漸近最小化問題を解決するために、適応射影劣勾配法が採用してきた凸射影を形式的に強アトラクト非拡大写像に拡張したアルゴリズムを提案し、その収束性能を明らかにしている。なお、適応射影劣勾配法について、IEEE ISCAS 2006(Greece)の特別セッションで招待講演論文に選定されている。さらに、適応射影劣勾配法の基盤になっている理論「非拡大写像の不動点理論」についても信号処理に関する最大の国際会議IEEE ICASSP2007で申請者によるチュートリアルレクチャー開催が決定している。 (注:他にも本研究課題を核にして応用は多岐に広がっている。研究発表欄をご参照ください。)
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