研究概要 |
本研究では交通における車両挙動に,運転者の心理バイアスをモデル化して組み込むことについての基礎的研究を日的としている.研究内容は大きく2つに分けられる.第1は,交通の実データを調査し,それを解析して車両毎の個性をモデル化し,それを用いてシミュレーションを行うことである,第2は,交通に限らない広い意味で心理バイアスの数理モデル化に関する研究である. 第1の目的のために次の研究を行った.実際の一般車両の走行の様子をビデオ撮影し,そのデータから車輌の車間距離と速度の関係,速度と加速度の関係を評価した.測定場所は愛知県西加茂郡三好町の国道153号線であり,晴天,雨天,夜間にのべ30時間程度ビデオ撮影を行った.得られたデータには晴天,雨天.夜間で優位な差がみられなかった.そこで,得られたデータの平均値と分散を求めた.得られたデータを片側2車線道路の交通流シミュレーションに適用した.用いたシミュレーションモデルは本研究室で開発を進めている確率速度モデルに基づいている.異なる走行車両密度でシミュレーションを行い,単位時間あたりの交通量を測定した.全ての車輌の挙動(速度と加速度)が平均値に従うとした場合と平均値と分散によって車輌ごとに異なる値をとるとした場合についてシミュレーションを行つた.両者を比較すると,後者のほうが最大交通量が減少した.そこで,車間距離め取り方についてさらに調査すると,実データの最小二乗近似から求めた車間距離よりも少し車間距離を小さくすると最大交通量が増大するが,小さくしすぎると交通量が減少することが確かめられた. また,第2の目的のために人工市場モデルにおける株取引のシミュレーションモデルについて研究を行った.これまでの研究では,取引高などは正規分布すると考えられているが,実際の市場の挙動には正規分布に従わないものが見受けられる.そこで,売買行動が正規分布に従う人工市場をマルチエージェントで作成し,これを元に市場参加者の行動が心理バイアスに左右されるモデルを作成した.これらのモデルを用いていくつかの会社の株価を創発した結果,心理バイアスを考慮したモデルの方がどちらかといえばより現実に結果を示すことを確かめた.
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