研究概要 |
平成18年度の研究では,前年度の研究で得られた感情認識および感情表現のための基本技術を基に、これらの改良・高度化とシステム統合を実現し、人間との心理的なコミュニケーションを行うことを可能にするロボット内部の感情制御エンジン(エモーションエンジン)のモデルを提案し,そのプロトタイプを試作した。エモーションエンジンの構築においては,話者から与えられる発話音声や表情・ジェスチャから抽出した感情要素の情報を基に話者の感情を推定する「感情認識部」と自らの内部モデルによって感情が生起し話者からのコミュニケーションに反応して変化する「感情遷移部」の基本アルゴリズムを考案した。感情認識部の基本アルゴリズムでは,ベイジアンネットワークの確率推論の機能を応用した感情認識ネットワークを構築することで,これを実現した。ベイジアンネットワークの学習については、ロボットと人間との会話を想定したシナリオ(脚本)を人間に与えて感情移入させ、そのシナリオに沿って人間が抱いた感情と音声や表情から抽出した感情要素を訓練事例として与えることで学習を行った。感情遷移部の基本設計としては,ロボット内部に自らの価値観としての語の好感度DBを構築し,会話中の相手とやり取りを通じて得られた質問文と返答語の言葉情報から会話相手に対して抱く好感度(対話者好感度)を計算することで,自己に感情を生起させるモデルを考案した.これらの研究結果は,研究代表者らが参画している産学共同プロジェクトにおいて過去に共同開発された感性会話型ロボットifbot上に試作実装され,会話実験等を行うことでその効果が検証されている。また,これらの研究成果は5編の雑誌論文と1編の国際会議論文として発表されている。
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