研究概要 |
平成19年度は,前年度の研究で得られた感情制御技術の高度化を中心に研究を行った。まず,話者から与えられる発話音声や表情、ジェスチャから抽出した感情要素の情報を基に話者の感情を推定する「感情認識部」については,話者から与えられた発話音声の韻律特徴を用いたベイジアンネットワーク感情推定モデルを考案し,推定すべき感情種別(怒,哀,嫌,怖,驚,喜)と韻律特徴の部分観測要素(基本周波数(FO),短時間パワー(PW)モーラ単位発話継続時間(Tm))との関連性について検討を行った。結果から,「怒」についてはFO,PW,Tmのいずれかが観測できれば比較的高い推定正答率を保てること,「嫌」「怖」「喜」については,それぞれ,FO,PW,Tmの韻律要素との関連性が強いことが示唆された。また,会話ロボットに実装するための計算処理時間についても検討し,提案手法が計算速度的に実現可能性を有していることを確認した。つづいて,自らの内部モデルによって感情が生起し話者からのコミュニケーションに反応して変化する「感情遷移部」については,昨年度に考案した会話過程に出現する語の高感度に基づいた感情生起のモデルに気分の概念を導入することで,感情制御の機能を高度化した。気分を情動の蓄積と捉え,気分遷移のグラフィカルモデルを考案し,同モデルのパラメタ設定を変更することによるロボットの性格付けのための基本アルゴリズムを考案した。 これらの研究結果は,研究代表者らが参画している産学共同プロジェクトにおいて過去に共同開発された感性会話型ロボットifbot上に試作実装され,会話実験等を行うことでその効果が検証されている。また,これらの研究成果は5編の雑誌論文と2編の国際会議論文,ならびに,7編の国内学会発表論文として発表されている。
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