研究概要 |
"エージェント"と抽象化して呼ばれる人工物の知能化・自律化を目指して,様々なアプローチ提案されている,この混沌とした状況の中で,着実に浮かび上がってきた領域の一つに進化ロボティクス(ER)がある.ERは,1.ロボット制御器を人工神経回路網(ANN)を用いて表現し,進化アルゴリズム(EA)を用いて学習させ,2.実際の自律ロボットシステムの行動制御をする,というものである.本研究は, 1.実効突然変異率および淘汰圧の自律的調整機構を持つEAを構築し,永続的人工進化論の構築に貢献する 2.分子進化の中立説に基づいたTWEANN手法を構築する 3.共進化型計算向け計算グリッドシステムを構築する の3本の柱からなっている. 平成17年度は,これら基礎論を平行して取り扱いしっかりとした基盤を構築して単一集団によるERシステムを構築することを目標とした.1.に対しては,進化遺伝学における根井の標準遺伝距離を用いた適応度景観の特徴と進化ダイナミクスの解析を行い,適応度景観の凸凹度合いと中立度合いを観測しながらGAの各手続きのチューニングのガイドラインを作成した.2に対しては,新しく,効果的なTWEANN手法であるMBEANNと名付けた進化型人工神経回路網を提案するとともに,標準的ベンチマークである二重倒立振子問題で有効性を検証した.3.に対しては,進化計算向け計算グリッドシステムの基本設計が終了し,実装と動作検証を行っている段階に来ている.進化型計算特有である細粒度タスクで有効になる新しいスケジューリング法を中心に実装を進めており,この予備実験では,既存のスケジューリング手法であるRR等に比して,良い結果を得ることができた.
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