エージェント機能を実現する知的原理としてファジイ意思決定支援システムを開発している。特に知的原理としての機能を充実させるため、二つの新しい手法を用いた。そのひとつは、ファジイ制御で重要なファクタであるメンバシップ関数を最適化するため、進化システムである遺伝的プログラミング(GP)を用いて自動化を図る.この場合に、その精度を向上させることを目的として、直交変換であるWalsh解析を用いることを試みている。この手法は、より精度の高い制御を目指すもので、個別の問題解決に最適なメンバシップ関数を自動的にしかも効率よく生成することができるものと考えられる。またふたつめは、局所解への収束を避けるために、カオスを用いて振動を与え、新しい種の発生を促して局所解に陥らないようにするものである。 先ず、進化システムであるGPの新しい利用方法として、メンバシップ関数であるLow関数、Middle関数、Hight関数を、デジタル指向の直交変換であるWalsh解析を用いて生成する方法を試みている。GPによって無の状態からメンバシップ関数を作り出すことも可能であるが、三角形状の直線関数を基準とし、これを基により望ましいメンバシップ関数にチューニングしている。このため、この基準関数をWalsh変換によって算出した係数を基にGP手法の漸化によって式の木を作成し、そしてこれらの式の木を要素にもった木構造でファジイ・メンバシップ関数を表現し、これを進化させることによって最適解を導く。次に、GP手法にカオス結合系(CML)を有効に適用している。このことにより、一連の関数が有機的に結合しながらバランス良く変化していくような進化過程を実現することが可能となり、解決の手がかりが得られた。 具体的には、協同現象が顕著であるカオス結合系(CML)を用いることによって、バランスの良いメンバーシップ関数の創成を検討している。このCMLは、カオスを発生する離散時間サブシステムを複数個結合させたもので、その全体システムを時間発展させると、協調、非協調と考えられる現象が確認されることから、自律的に協調動作をとって全体システムの調和をとるモデルの制御に対して有効であると考えられる。これにより、GP母集団の個体同士が相互に連係し、一連のメンバーシップ関数がある種の結合を持ちながら生成される環境を実現することができたものと思われた。
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