研究概要 |
M&A交渉における相手先企業の選択方法として,人間の価値判断処理に有効である階層分析法(AHP:Analytic Hierarchy Process)にファジィ制御を応用したシステムの構築について検討した.AHPは,まず複数の評価基準に対し,次々と一対比較し評価基準に関する重要度を算出し,そしてこの各評価基準に基づき複数の代替案の一対比較を行い代替案に関する重要度を算出する.ただ,このような従来のAHPでは,一対比較の整合性が取り難く,意思決定者に大きな負担を与えることがある.これを改善するため,本手法は,ファジィ数を用いることによってこの整合性問題の負担を少なくすることを試みた.このファジィAHPの具体的な方法として,一対比較結果を表現する修飾語に対して一対比較者の感覚に合致するように三角型ファジィ数を割り当てた.簡易化のため,ファジィAHPでは等間隔の三角型メンバーシップ関数が使用される.しかし,この等間隔の三角型メンバーシップ関数では,意思決定者の満足のいく表現ではないと考えられる.そこで本研究では,修飾語に割り当てる数値に関して、意思決定者の感覚をメンバーシップ関数で表現することとし,これを進化計算手法の一種である遺伝的プログラミングとカオティックランダムを用いてチューンナップする方法について検討した.その結果,事例に適したメンバーシップ関数を見つけることができ,また他のM&A事例でも評価者に適したメンバーシップ関数が得られるものと考えられた.なお,意思決定者の満足の得られる結果となるようにチューニングする必要があるものと思われた.
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