1)H17年度〜H18年度にわたり、SOM(自己組織化マップ)、情報エントロピー、1/fゆらぎ、データ圧縮率、長距離秩序度等の指標が、DNA塩基配列の特徴点(たとえば転写開始点、Exon/Intron境界)に対応して変化するか否かという基本的性質を調べることにより、各手法の適用可能性を探った。 2)H19年度においては、このうち有力と思われた情報エントロピーと1/fゆらぎを選び、これらを指標として進化の足跡を追ってみた。具体的には、10種類のモデル生物(ヒト、マウス、ショウジョウバエ、ゼンチュウ、出芽酵母、分裂酵母、マラリア原虫、メタン性古細菌、大腸菌、シロイヌナズナ)を選び、これらに含まれる28種のリボソームたんぱく質遺伝子の塩基配列間の類似性を調べ、進化系統樹を作った。 その結果、情報エントロピーを用いた系統樹では、ヒトとマウスのように近接関係にある近いものは同じような結果になるが、ある程度離れた種を表す木構造はCLUSTAL-Wの木とはかなり違うことが分かった。一方、1/fゆらぎに関しては、やはり木全体の一致度はあまりよくないが、アラインメントをかけないシーケンスの方がアラインメントをかけたシーケンスより、むしろ良い結果が得られた。 このことは、まったく未知生物の遺伝子比較をする場合、1/fゆらぎが有利な方法であることを示唆している。
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