研究課題
我々が隠れマルコフ鎖の推測に用いる神経回路網は、ベイズ判別関数学習の能力を持たなければならない。我々は2005年、学術誌Neurocomputingに神経回路網によるベイズ学習の理論の論文を発表した。その論文において、回路網の神経素子は先駆者の研究結果の約半数で十分な事を証明した。神経素子の数を減らすと、過学習や極小値問題などの学習の困難に遭遇する可能性は少なくなると一般に信じられており、この論文に基づいて神経回路網を設計すれば、シミュレーションはより順調に進むと期待されたが、学習の困難は解消されず、確率分布が1次元の単純な場合にのみシミュレーションは成功した。この一年、当初は、上記の論文に基づくシミュレーションの繰り返しと、初期値の選定など学習への有効な介助方法の模索に多くの時間を費やした。それでも困難が解消されないので、結局、神経回路網による関数近似理論の再考が必要ではないかと考えるに至った。神経回路網による関数近似は柔軟な基底関数(活性化関数)を用いるのがその特徴であり、正規直交系などのリジッドな基底関数を用いる近似はその対極にある。後者の場合、基底関数の外部変数である係数のみを学習すればよく、前者は内部変数をも学習しなければならないので、より困難と想定される。基底関数を通常の神経回路網に比べて若干リジッドにして学習を容易にする事が可能ではないかと考えて考察し、論文にまとめ投稿した。結果はまだ聞いていないが、関係する予備的研究結果を国際合同神経回路網学会(IJCNNO7)に投稿し、受理された。その間に、ベイズ神経回路網に若干の修正を加える事により、マハラノビス判別関数を学習する神経回路網の実現が可能と気づき、論文にまとめて国際神経回路網学会(ICANNO6)にて発表した。日本神経回路学会(2006年)においても関連論文を発表した。
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Artificial Neural Networks, ICANN 2006 LNCS4131
ページ: 350-360