研究概要 |
本研究の目的は、公的ICカードの発行状況、住民と行政職員の意識調査、さらには受容に関する成功事例と失敗事例を比較分析することにより、住民基本台帳カードをはじめとした公的ICカードを国民が受容するための条件を明らかにすることにある。そして、その条件を整えるための課題を明らかにすることにより、公的ICカード政策の受容性を向上することに貢献する。平成17年度は、1.公的ICカード全国調査の実施、2.受容性に関するヒアリング調査、3.政策受容過程の詳細分析の3項目を研究計画の柱として研究を推進した。 1.公的ICカード全国調査の実施 全ての地方公共団体(都道府県ならびに市町村2,093団体)を対象に全国調査を実施した。調査期間は2006年2月14日から3月10日までである。現在、約35%の団体から回答を得て集計作業を進めており、まもなく分析作業に入る。調査内容は主に行政職員の意識を明らかにするものである。また、住民の個人情報に関わる意識を明らかにするため、2005年10月23日にボランティア活動のために携帯電話を利用した個人情報収集を試み、収集した個人情報の利用にかかわる意識調査を実施した。 2.受容性に関するヒアリング調査 岐阜県と共同して全国13の県市町村のヒアリング調査を実施した。調査報告書を現在まとめている。またEU Information Society Technorogies "International Conference on Safeguards in a World of Ambient Intelligence-Policy Options to Counteract Threats and Vulnerabilities-First Results" 21-22 March 2006,Brusselsにて政策受容性に関する議論に加わった。 3.政策受容過程の詳細分析 神奈川県大和市のICカード受容のプロセスを分析した。大和市では公的ICカードのための情報環境整備とともに、ICカード条例、規則の制定、個人情報保護条例や情報公開条例の改正などを相次いで実施し、ICカード導入のプロセスも情報公開と市民参加を早期に実施しており、ICカード政策が受容されてゆくためには、そのプロセスを公開すること、自己の個人情報の閲覧、修正などのコントロール権への配慮を行なうことなどが受容性を高める可能性があることを明らかにした。
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