研究課題
基盤研究(C)
わが国が利用する住民基本台帳カードなどの公的ICカードは、耐久性に優れた非接触式の通信方式を備え、高度な暗号技術や耐ダンパー性を備えている。さらに全国にその発行体制を備え、規格に関する標準化もなされている。わが国の公的ICカードは世界で最も進んだICカード基盤といえる。情報社会の安全と信頼を確保するために、ICカードは、すべての国民に対して多様な情報サービスへのアクセシビリティを確保するために必要不可欠な基盤である。しかし、その発行にあたっては、個人情報やプライバシー保護を主張する反対運動などが発生し、国民の公的ICカードに対する受容性は低い。本研究の目的は、公的ICカードの発行状況、住民と行政職員の意識調査、さらには受容に関する成功事例を分析することにより、住民基本台帳カードをはじめとした公的ICカードを国民が受容するための条件を明らかにし、公的ICカード政策の受容性の向上に貢献する。そして、本研究は次のような成果を得た。自治体職員は、利便性の低さが公的ICカードの普及阻害要因であり、住民が個人情報に対して強い抵抗感がなかったと認識している。そして住民は、個人情報の利用について、性別、氏名、生年月日等の情報を許容する。ただし、医療健康情報の提供などプライバシーに関わる情報は許容しない。その場合、住民は、自らの意思による自己情報の修正、削除についての配慮がなされることで抵抗感はやわらぐ。公的ICカードは、国による行政サービスを増やすべきだが、国保などの医療健康サービスをICカード化することにより一気に普及拡大を目指すことは好ましくない。市町村の情報政策のコミュニケーション能力を向上させ、ICカードの管理運用体制を充実させることが、結果的には民間や市町村が自立的に日々の暮らしの中で利用する情報サービスを増やし、その政策受容性を向上させる可能性が示された。
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