研究概要 |
17年度の研究実施計画に基づき、両眼性競合時の知覚の変化における注意の役割について,前頭部θ律動(Fmθ)を指標に検討を行った。 被験者として同意の得られた大学生を対象に実験を行った。被験者には脳波(Fz, Pz)電極および眼球モニタ電極を装着した。被験者の正面60cmにパソコンモニターを設置してテトリスゲーム画像を左眼で見させた。右眼には単眼式ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、HMDを通して眼前60cmに右眼と同じ13インチ画面が見えるようにセットし、画像は無地灰色画面を常に提示して、4〜8秒のランダムな間隔でアルファベット文字をフラッシュ呈示した。被験者には文字を認知した場合は、その文字種を口頭で返事させ、その回答は実験者が脳波とともに記録した。 動画を見ているだけの非ゲーム時では、被験者全員の文字検出率はほぼ100%であったが、Fmθは出現しなかった。ゲーム中ではFmθ出現が半数で見られ、抑制眼での文字の検出率はFmθ出現群が非出現群より有意に低かった。Fmθの出現した被験者のうち、Fmθ出現量の多い者4名を対象にHMD提示文字の検出時と非検出時の文字提示前後での自己相関脳波コレログラムを比較したところ、文字提示前後で、θ帯域の自己相関係数は、文字認知時には著明な低下が認められたが、文字非認知時では文字提示後も高く維持されていた。 以上の結果は、一側の目に提示したゲーム動画に注意を向けることで,抑制眼の文字認知率が有意に減少したことから,競合時の知覚の優勢に注意が影響するという議論を支持する。Fmθ出現時は優勢眼への注意レベルがより高い、すなわち抑制眼入力処理の抑制がより強い状態と考えられ、抑制眼刺激への注意の転換と認知処理の再開には、注意レベルを変化することで抑制眼での文字認知が可能となることが考えられた。
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