研究概要 |
研究代表者ならびに研究協力者が提案した認知モデルに基づく認知的ウォークスルー法において,評価対象システムにおける問題点を発見するための9つの質問項目を認知科学の素養を有しない分析者にも理解しやすい表現に置き換えることによって洗練した〔(1)認知モデルの構築〕. その上で,さまざまなタイプの質問項目を用いて評価実験を行うための評価支援システムを開発した.この評価支援システムは,我々が提案する質問項目(質問数9個)だけでなく,従来の認知的ウォークスルー法で用いられた質問項目(質問数4個)やその他の質問項目にも利用できるように設計されている〔(4)評価支援システムの開発〕.この評価支援システムを用いて,我々が提案する評価手法と従来の認知的ウォークスルー法について比較実験を行った.実験は学部生48名の協力を得て実施され,分析の結果,我々の評価手法は従来手法に比べて問題発見効率において優れていることが示された. さらに,より実際的な状況における検討を研究協力者の協力を得て行った.今井氏(ユーディット)は,全盲,脳性麻痺3級,聴覚障害2級を含む6名の分析者による評価実験を行った.その結果,想定ユーザの特性に応じて一部の質問項目を省略することによって,評価手法をより円滑に適用できる見通しを得た〔(2)評価手法の開発〕.一方,山崎氏(日本IBM)の協力を得て,企業の現場で実施されたユーザビリティ評価の結果を,9つの質問項目に照らして分類した.その結果,我々が提案する認知モデルが実務レベルにおいても評価結果を体系的に整理する上で有効であることが確認された〔(3)デザイン原理の特定〕.
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