研究概要 |
認知的ウォークスルー法(CW法)を用いてユーザビリティ評価を行う場合,質問内容と回答要領をどのように説明すべきかについて明確な指針は確立されていない.そこで,本年度は分析者に正答例を提示することが問題発見効率に及ぼす影響について検討した.具体的には学部生68名の協力を得て2つのWebサイトについてCW法を用いて評価実験を実施し,CW法の種類(旧版,新版),正答提示の有無,評価対象サイト(2種類)について3要因の分散分析を行った.その結果,正答提示を行った方(0.28)が提示無しの場合(0.22)よりも正答率が高くその差は有意であり(p<.05),正答提示による主効果が認められた.ただし,本実験では平均正答率は全体的に低かったことから,事前説明を過度に簡略化することなく質問意図を例示することの重要性も確認された. CW法による評価実験を行うための評価支援システム(前年度開発)については,以下の2点で機能拡張を行った.(1)CW法だけでなく,様々な質問形式によるインスペクション法による評価が統合的に実施できるように,アンケート調査の実施と結果データの収集を支援する機能を実現した.(2)CW法による評価を障害者自身によって遠隔地からも実施できるように,支援ツールのアクセシビリティを向上させた.この拡張された評価支援システムを用いて,障害者自身(全盲2名,強度の弱視2名)によるWebサイト評価を,オンラインの遠隔評価によって実施した.この実験を通して参加した障害者から支援ツールについてアクセシビリティ上の不備は指摘されず,支援ツールの実用性について一定の評価を得ることができた.本支援システムは,障害者や高齢者を含む様々な特性のユーザから評価データを収集するとともに,インスペクション法の遠隔評価について実施手順を確立していくために有効な手段を提供となることが期待される.
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