研究概要 |
平成18年度においては,以下の研究成果を得た. 1)因果ダイアグラムに関する識別可能性に関する研究 因果ダイアグラムにおいて、矢線への介入効果という新しい概念を条件付き介入効果の枠組みにおいて定式化した.また,この識別可能条件を求めた.線形構造方程式モデルのもとでこの矢線への介入効果を具体的に求め,最適な介入方式を与えた.これにより,従来処理変数のみに適用可能であった変数への介入から,共変量や中間特性の影響に介入することが可能になり,最終品質特性の分散低減に役立てることが可能になった. 2)有限混合分布モデルの識別可能条件に関する研究 有限混合分布を識別可能とするために母数空間に制約を設けるアプローチにおいて,従来の一様分布モデルから位置・尺度分布族という広範な分布において,最尤推定値が一致性をもつ必要十分条件を明らかにした.また,母数空間に制約を与える具体的な方法についてもクロスバリデーションを用いた方法を提示した. 3)殆直交表を用いた要因効果に識別可能性に関する研究 L36直交表に6水準因子を割付ける方法を調べ,最大で3つの6水準因子をたがいに直交して割付けられることを示した.また,最小の交絡のもとで,最大6個の6水準因子を割付けるための殆直交表を作成した. 4)マハラノビス距離を用いた非対称的判別手法での誤判別率に関する研究 MTS(マハラノビス・タグチ・システム)の名で近年普及している非対称的判別手法において,初期標本から求めた判別式において将来の標本を誤判別する割合を理論的に求めた.結果として,従来のカイ2乗分布による判定では実際の誤判別率が名目の値を大きく上回ること,代わりにF分布による判定によって平均的には正確に名目値を達成すること示した.また,初期標本を与えたもとでの実際の誤判別率の推定が困難であることを示した.
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