研究概要 |
多変量正規分布の平均ベクトルや共分散行列の推定問題において通常の標本平均や標本共分散行列が非許容的であると結果(いわゆるスタイン現象,スタインにより提案された新たな推定法を縮小推定と呼ばれている)がスタインにより示されて以来,スタイン現象や縮小推定法に関する研究がおおくなされている.しかし,縮小推定法の研究が現時点ではまだ十分に展開されていない統計モデルにおいて縮小推定法の考案とその最適理論の研究が本研究の目的である.古典的なモデルをこえたモデルにおいて,縮小推定法の有効性が理論的および数値実験比較の観点から示されれば,縮小推定法の適用が古典的な統計モデルを超えて適用可能なことが明らかとなる. 以上のことを目的として研究を進めた結果,本年度に得られた主な研究成果は次の2点にまとめられる.(1)ショルダン代数を利用した多変量統計モデルの体系的な研究の可能性を明らかにしつつ,対称錘上のウィシャート分布に関する現時点での先行研究を踏まえ,対称錘を記述するために重要な役割を果たすジョルダン代数についての基本的な事項について整理をした上で,対称錘上のウィシャート分布の期待値母数の推定問題において決定理論の枠組みから新たな推定量を導出し,その最適性について調べた研究結果に関する論文が現在審査中である.また,日本数学会2006年度年大会(中央大学理工学部,2006年3月29日)において上記研究成果についての口頭発表を行った.(2)エルミート対称行列上の複素ウィシャート分布を含む多変量モデルにおいて,そのスケール行列の推定問題を考え,縮小推定量を構成する理論的な道具立てを調べた研究成果をまとめた論文が現在審査中である. さらに,(2)の結果を踏まえ,複素分散分析モデルにおける回帰行列の推定問題を統計決定理論に観点から議論する論文が現在準備中である。
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