研究概要 |
多変量正規分布の平均ベクトルや共分散行列の推定問題において通常の標本平均や標本共分散行列が非許容的であると結果(いわゆるスタイン現象,スタインにより提案された新たな推定法を縮小推定と呼ばれている)がスタインにより示されて以来,スタイン現象や縮小推定法に関する研究がおおくなされている.しかし,縮小推定法の研究が現時点ではまだ十分に展開されていない統計モデルにおいて縮小推定法の考案とその最適理論の研究が本研究の目的である.古典的なモデルをこえたモデルにおいて,縮小推定法の有効性が理論的および数値実験比較の観点から示されれば,縮小推定法の適用が古典的な統計モデルを超えて適用可能なことが明らかとなる. 以上のことを目的として研究を進めた結果,本年度に得られた主な研究成果は次の5点にまとめられる.(1)ショルダン代数を利用した多変量統計モデルの体系的な研究の可能性を明らかにしつつ,対称錘上のウィシャート分布に関する現時点での先行研究を踏まえ,対称錘を記述するために重要な役割を果たすジョルダン代数についての基本的な事項について整理をした上で,対称錘上のウィシャート分布の期待値母数の推定問題において決定理論の枠組みから新たな推定量を導出し,その最適性について調べた。(2)さらに,対称錘上のウィシャート分布のなかでも,次数が2のモデルについてミニマックス推定量の新たな族を導出した.(3)多変量複素正規分布を含む複素多変量楕円分布モデルのスケール行列の推定問題を考え,スタイン損失のもとで縮小推定量を構成した.さらに,(4)複素多変量正規分散分析モデルにおける平均行列の推定問題を統計的決定理論を立場より議論し,体系的な改良型推定量の導出法を検討した論文が審査中である.また,(5)複素ウイシャート分布のスケール行列の推定問題を不変な2上損失のもとで議論した論文も審査中である.
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