研究概要 |
科学技術の急速な発展から新しいタイプのデータを解析(遺伝学研究におけるマイクロアレイデータと量的形質座位の解析等が典型的な例)するために,統計推測手法とモデリングの研究を,古典的な多変量解析の理論的な枠組みを超えて展開する必要がある。本研究では,分野横断的な数理理論を援用することにより,多変量解析の古典的な理論を超えた体系的かつ一般的な推測理論を構築することを目的として研究を進めた.本年は特に下記のような結果を得た. (1)実多変量正規分布の共分散問題(標本数が変数の次数より大きい場合)で知られている結果を複素多変量正規分布の共分散行列の推定問題に拡張した結果をまとめた論文が国外学術専門誌に掲載予定である. (2)多変量正規分布(実正規分布と複素正規分布)からの標本数が,変数の次数より小さい場合には,標本共分散行列が特異(正値対称ではなくランクが落ちる)となり,推定量は不安定になる.さらに,標本数が変数の次数よりも大きな場合でも標本分散行列は母数今日分散行列よりも精度がわるいことが知られている.このような欠点を克服する推定量をある種の不変損失関数のもとで改良型推定量を導出した。さらに,数値実験により,改良型推定量を正定値にした修正集定量は,安定性と精度の観点から標本共分散行列よりもよいこと確認した.この結果は,2008年度統計関連連合大会および研究集会で口頭発表し,論文としてまとめたものは現在専門誌において審査中(リバイスを再投稿済み)である.
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