研究概要 |
成体イモリの網膜再生機構を明らかにするために(1)〜(3)の実験を行った。 (1)細胞・分子マーカーをもちいたRPE細胞の分化転換過程の解析 網膜再生過程を9ステージに分けることに成功した(Chiba et al.,2006)。また、神経網膜が除去されると、RPE細胞は一部の形質を残したまま、新たな遺伝子を発現しリプログラムされることを示した。Pax-6、Musashi-1、Chx10-1、Notch-1に対する抗体の作製・評価を行った。Pax-6については、4つのバリアント全てを認識する抗体と、2つずつ別々に認識する2種類の抗体を得ることが出来た。その他については、まだ特異性の高い抗体が得られていない。in situハイブリダイゼーション解析の結果、Musashi-1が成熟した神経網膜中にも発現していることや、Notch-1が網膜発生とよく似たパターンで再発現することが判った。 (2)遺伝子強制発現・ノックダウンの条件決定 蛍光トレーサーLFDを用いて、眼球内のRPE細胞に対するマイクロインジェクション条件を検討した。その結果、少なくとも術後14日の網膜原基と再建中のRPEにまでLFDを追跡する出来る条件を決定した。現在、発現ベクターやアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖の注入条件を検討している。今後、アンチセンスS-オリゴヌクレオチド鎖の腹腔内投与条件の検討も行う予定である。 (3)RPE細胞の無血清単離培養法によるFGF-2の分化転換に対する機能解析 RPE細胞の培養下での挙動を分子・細胞マーカーなどを用いて解析した。その結果、血清やFGF2などの液性因子を含まない条件でも、RPE細胞がニューロンの形質を発現する(すなわち分化転換する)ことが判った(米国神経科学学会報告)。網膜再生過程と比較した結果、培養条件下では神経前駆細胞段階をスキップする可能性が示唆された。
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