研究概要 |
ラジアルグリアは神経上皮を構成する細胞であり、細胞体は神経上皮に存在するが、その突起(ラジアルファイバー)を脳表層に向かって長く伸ばすという特徴的な構造を持つ。大脳皮質では、このラジアルファイバーを基質として神経細胞が移動することが知られている。本研究では、このラジアルグリアの動態に着目し、神経細胞移動時における形態的変化を調べた。方法としては、細胞の微細構造を可視化するため、膜結合型YFP-CAAXのコンストラクト作製し、子宮内電気穿孔法によってこれを神経上皮に導入した後、一定時間後に固定して解析を行った。一部は抗ネスチン抗体を用いた免疫組織染色法を用いた。その結果、大きな変化として、髄膜に接する部分にあるラジアルグリアのエンドフィートと呼ばれる終末構造に最初分岐は見られないが、発生が進むにつれ分岐することがわかった。の分岐位置は、神経細胞の先導突起先端(あるいは先端樹状突起)に見られる分岐位置に一致していた。また、ラジアルファイバーの密度は発生が進むにつれて低くなった。これまでの研究で、サル胎児大脳皮質のゴルジ染色による観察で、ラジアルファイバー上にはlamellate expansionsと呼ばれる小突起が認められ、その数は発生とともに増加し、分布は不均一であるという報告があるが(Rakic,1972)、マウス脳においては、この小突起が見られる頻度は少ないようであった。本研究の更なる目的である1)ラジアルグリアの構造を、生きた状態で観察する技術の開発および2)ラジアルグリアを基質として移動する皮質神経細胞との動的細胞間相互作用の解析については進行中であり今後の課題となった。
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