本研究計画の主要目的は、4.7T超高磁場MRI装置を用いた高解像度撮像により、微小電極によるマカクサル慢性単一神経細胞記録において、電極先端位置が大脳皮質の第何層に局在するかを同定する技術を開発することであった。大脳皮質の層構造は神経回路と密接な関係をもつので、記録電極先端位置が大脳皮質の第何層にあるかを知ることができれば、記録された神経細胞発火を神経回路に関連づけて研究することが可能となる。18年度実績報告書において報告したとおり、我々は、MRIの静磁場および位相エンコーディング方向を、微小電極長軸に対して直角におくことよって、電極先端位置の検出性が高まることを証明した。この原理をもとに、我々は大脳皮質内に誤差1ボクセル以内で微小電極先端位置を同定する手法を開発した。さらに我々は、非磁性素材で作られ、サルの頭部に常時設置可能なコンパクトな電極マニピュレータを開発し、この手法の実用性を確立した。これらの結果は、naturemethods誌2007年2月号に掲載された。19年度はこの技術を慢性サルにおける単一神経細胞記録に実際に応用し、高次認知機能を担う神経回路の解析を行う実験に着手したところである。そのため19年度内にはこの方法を応用した成果を発表するまでには至らなかった。しかし、18年度中に研究計画の主要な部分をすでに達成したこと、この手法は将来にわたって神経科学における有用な手法となると考えられることから、研究計画全体としては、十分な実績を挙げたものと考えている。
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