本研究計画の主要目的は、4.7T超高磁場MRI装置を用いた高解像度撮像により、微小電極によるマカクサル慢性単一神経細胞記録において、電極先端位置が大脳皮質の第何層に局在するかを同定する技術を開発することであった。大脳皮質の層構造は神経回路と密接な関係をもつので、記録電極先端位置が大脳皮質の第何層にあるかを知ることができれば、記録された神経細胞発火を神経回路に関連づけて研究することが可能となり、神経科学に新たな局面を切り開くものとなる。本研究において我々は、MRIの静磁場および位相エンコーディング方向を、微小電極長軸に対して直角におくことよって、従来撮像が困難であった、電極先端位置の検出性と正確性が高まることを証明した。この原理をもとに、我々は大脳皮質内に1ミリメートル以下の空間解像度および誤差1ボクセル以内で微小電極先端位置を同定する手法を開発した。さらに我々は、非磁性素材で作られ、サルの頭部に常時設置可能なコンパクトな電極マニピュレータを開発し、この手法の実用性を確立した。これらの結果は、nature methods誌2007年2月号に掲載された他、Trends in Cognitive Sciences誌に総説として発表された。また北米神経科学学会等の学会で発表された。この手法は将来にわたって神経科学における有用な手法となることから、研究計画全体として、十分な実績を挙げたものと考えている。
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