研究概要 |
この研究は、脳機能を支える心理的構成要素ごとにその担当脳領域を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って同定し、さらに、その正確な位置情報を参照して個々の被験者の脳を共通の鋳型(標準脳という)に変形してあわせこむ(標準化という)ことにより、個体間での脳機能領域の比較や解析を高精度で可能にする方法(機能情報参照型脳皮質標準化法)を開発し、脳機能の個体差を主眼とした脳機能マッピングを行うこと目的とする。初年度は、脳皮質標準化の開発に着手し、fMRI実験による脳機能領域のデータベース取得を行った。脳皮質標準化法開発の前提として、まずベースとなる脳機能領域情報を取得することが不可欠であるので、fMRIによる機能マッピングにより、大脳全域をカバーできるデータベース作りをすすめた。まず前頭葉では、行動の切り替え機能を必要とするWisconsin Card Sorting Task(WCST)において、直前の行動様式からの干渉が長く続き、これを抑制する機能を担当する領域が前頭前野の前方部に存在することが示された(Konishi et al., PNAS,2005)。また頭頂葉では、行動の切り替え時の試行錯誤を担当する領域は、左右両半球に存在したのに対し、行動の切り替え機能そのものを担当する領域は、左半球のみに存在することが示された(Asari et al., Neuroimage,2005)。さらに側頭葉では、時間的順序に関する記憶を必要とするRecency Judgment Taskにおいて、単語刺激の記銘時に別の負荷をかけることにより記銘を障害してやると、時間順序の判断を担当する領域が、側頭葉内側から側頭葉外側へと変化することが示された(Konishi et al., Cerebral Cortex,2006)。
|