研究概要 |
この研究は、脳機能を支える心理的構成要素ごとにその担当脳領域を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って同定し、さらに、その正確な位置情報を参照して個々の被験者の脳を共通の鋳型(標準脳という)に変形してあわせこむ(標準化という)ことにより、個体間での脳機能領域の比較や解析を高精度で可能にする方法(機能情報参照型脳皮質標準化法)を開発し、脳機能の個体差を主眼とした脳機能マッピングを行うこと目的とする。19年度は、画像処理アルゴリズムを使った脳皮質標準化方法を開発に着手するとともに、引き続きfMRI実験による脳機能領域のデータベース取得を行った。 本年度は前頭葉の機能領域の組織化のありかたを3つの空間次元でアプローチした。一つめは大脳半球間の機能分化で、下前頭回が担っている抑制機能が、抑制する干渉が言語によって生じるか否かによって決まることを見出した(Morimoto, et. al., 2008)。2つめは同じ半球内での機能分化で、行動の切り替え機能において、この機能が必要とする課題に慣れている被験者に適用した場合は下前頭回が重要で、逆に慣れていない被験者に適用した場合には、下前頭回ではなく中前頭回が重要な役割を果たすことを見出した(Konishi, et. al., 2008)。3つめは非常に近接した領域間での機能分化で、反応抑制が右半球の下前頭回後方部位で担われていることを確認する一方、稀な反応を処理するめのた神経機構は、反応抑制の領域よりも2cmほど背側・後方に存在することを見出した(Chikazoe, et. al., 2008)。これら3つの空間次元での機能分化の知見は、大脳機能マッピングを行う際に必要な機能領城組織化の基本原則を示唆する。
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