(1)シングルフォトン断層像による歩行中脳活動の測定法を用いて、多発性脳梗塞患者17人(うち高次歩行障害を呈する患者9名)を撮像した。歩行障害の程度を、歩行分析とすくみ足スケールで評価し、グループ分けを行った。まだ被験者数が十分でないが、予備的な中間解析では、歩行障害群において、両側補足運動野及び後頭葉に、歩行中脳活動の低下を認めた。群化せず、歩行パラメータとの相関解析を行っても、同様の部位に脳活動の差を認めた。補足運動野の活動低下は、多発性脳梗塞に伴う歩行障害が、パーキンソン病の歩行障害と病態を共通にする可能性を示唆する。今後さらに被験者数を増やしていく予定である。(2)MRI拡散テンソル画像(DTI)を用いて、多発性脳梗塞患者18人を撮像した。DTIから、白質の統合性を反映するfractional anisotropy(FA)mapを作成し、歩行障害群と非歩行障害群間で比較すると、両側補足運動野近辺の白質において、歩行障害群でFA値の低下を認めた。予備的な解析結果であるが、多発性脳梗塞に伴う歩行障害の病態に、補足運動野周辺の白質統合性低下が関与している可能性を示唆する。今後さらに被験者数を増やし、高齢者対照群の撮像も考慮していく。(3)歩行の観察、想像中の脳活動を機能的MRIで測定する方法を用いて、健常被験者11名を撮像した。歩行の観察と想像に共通して脳活動が上昇する領域が、運動前野と後頭葉に認められた。これらの活動は視覚的にパターンを認知する領域を含んでいると考えられる。いわゆる"歩行失行"のような病態がこれらの領域の機能低下と関係するのかどうか、(1)、(2)の結果と合わせて残りの研究期間で検討していく。
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