昨年度までの株化細胞を用いて行った検討でCNRタンパク質のC末端領域に存在するリジンに富んだ23アミノ酸残基からなる領域(リジンリッチドメイン)はCNRタンパク質の細胞内局在を制御する機能ドメインと予想された。本年度は、神経細胞内でのリジンリッチドメインの機能を探るため、in uteroエレクトロポーレーション法を新たに導入し検討を行った。N末端にmycタグ配列を有し、C末端を段階的に短くしたCNR変異タンパク質をCAGプロモータ制御下で発現させるベクターをGFPの発現ベクターと共に胎生15.5日のICRマウスの神経細胞に導入した。生後3週令で脳を固定し、タグ配列に対する抗体を用いた免疫染色を行い、GFPとの二重標識を行った。全長CNRタンパク質はほとんどが細胞体に集積するのに対して、リジンリッチドメインを欠いたCNRタンパク質は樹状突起や軸索の近位部にも存在する様子が観察された。この結果から、リジンリッチドメインは神経細胞においてもCNRタンパク質の局在制御に重要なドメインであることが示された。また、リジンリッチドメインを介してCNRタンパク質と相互作用する分子の同定を行うため、昨年度に引き続き抗CNR抗体を用いた免疫沈降法を行ったが、明らかな共沈タンパク質は認められなかった。このため本年度はmycタグ配列を付加したCNRタンパク質(リジンリッチドメイン有、無の2種)をCOS7細胞に安定発現させた細胞株を樹立した。今後、これらの細胞株を用いて抗myc抗体による免疫沈降実験を行う。またリジンリッチドメインに対応するビオチン標識合成ペプチドをbaitとし、ストレプトアビジン固定化ビーズを用いた沈降実験を行ったが、沈降物が多く、特異的沈降物の同定には至っていない。
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