11個のアルギニン(11R)からなるペプチドを目的の蛋白質に融合することにより、細胞内へ直接タンパク質を導入する方法の開発を行ってきた。この研究の過程で、導入効率を飛躍的に上昇させる新規導入ペプチドを発見している。 本研究では、興奮性神経細胞死に重要な役割を果たす、蛋白質の立体構造や生化学的情報に基づき、細胞内情報伝達を制御可能な蛋白質や阻害ペプチドをデザインし11Rと融合することにより、脳梗塞治療可能な分子プローブの開発をめざした。その結果として、以下の研究成果が得られた。 1、導入効率を向上させるインフルエンザウイルス融合ペプチドを開発し、培養細胞にてその効果を確認した。 2、タンパク質導入に際して、タンパク質そのものがユビキチン化され分解される場合、ユビキチン化サイトを置換する事により、蛋白分解を抑制し、タンパク質の機能時間を長期にする事に成功した。 3、興奮性神経細胞死がタンパク質分解酵素の一種である、カルパインによって効果的に抑制される事を利用し、カルパインの阻害ペプチドとタンパク質導入ドメインを融合し、効果的に神経細胞死を防ぐペプチドを合成した。このペプチドを利用し、培養細胞レベルで神経細胞死を抑制することに成功した。 4、転写因子の一つであるPDX-1が細胞内に導入される事を報告していたが、そのメカニズムについてマクロピノサイトーシスが関与している事を明らかにすることができた。
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