臨床的、病理組織学的にこれまで報告のない小脳変性症の3家系、3剖検例について臨床症状、および病理組織学的所見を検討した結果、それぞれが独自の臨床症状を呈し、中枢神経系の障害部位が明らかに異なり、1C2免疫染色によって陽性となる多数の核内封入体もまた、それぞれ特徴ある分布で存在していることを確認した。そのうち、1家系1剖検例でSCA17のホモ接合体であることが判明した。SCA17ホモ接合体の報告はこれまで全くなく、臨床病理学的所見とあわせて報告した。 当研究所ではすでに、胎児脳cDNAライブラリーより単離された300個以上の新規クローンに基づく、増大CAG繰り返し配列を持つcDNAシークエンスとプライマーセットを開発しており、これを用いた未解明神経変性疾患の大規模スクリーニングシステムが確立している。未知の2家系についてはこれらのヒト脳で発現している増大ポリグルタミン鎖について増大の有無を確認中であるが、現在のところポリグルタミンの異常伸長を認めたものはない。 さらに1家系では通常のウエスタンブロッティング法により、1C2により染色、反応される蛋白の存在を確認している。同サンプルの2次元電気泳動とウェスタンブロッティングを行うことで、原因蛋白(ポリグルタミンを有する)と考えられるスポットを同定後、同定したスポットを単離し、MALDI-TOF MS(当研究所備品)を用いてポリグルタミン鎖を持つペプチドの周辺アミノ酸配列の決定を試みた。単離したスポットには短いポリグルタミン鎖を有する蛋白が含まれていたが、現在のところ原因蛋白の同定には至っていない。ポリグルタミン病患者群と対照疾患群を2-D DIGEで解析した結果、常にポリグルタミン病患者群で増加、あるいは減少しているスポットを数個同定した。
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