研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、 ALS)は、有効な治療法確立が強く希求されている原因不明の致死的神経変性疾患の代表である。本研究においては、以下の項目に沿って、ALSに対する神経成長因子であるミッドカイン(midkine, MK)の有効性を確立した。第一にヒトMK特異的モノクロール抗体とヒト、マウス、ラットのMKを認識するポリクローナル抗体を作製した。新規に作成した抗体を使用することにより、第二に、ヒト剖検例:弧発性ALS40症例と家族性ALS(FALS)2家系5症例と変異SOD1過剰発現ALSモデル動物:G1H-G93Aトランスジェニック(Tg)マウス・H46R-Tgラット・G93A-Tgラットにおいて、運動神経細胞の一部はMKを再発現し、自らを守って生存する内因性生存機構の存在を明らかにした。第三に、MK過剰発現トランスジェニック(MK-Tg)マウスを作製した。このMK-ALS Tgマウスの運動神経細胞において、MKの過剰発現を証明した。第四に、変異SOD1-MK過剰発現ダブルトランスジェニックマウス(MK-ALS Tg)の作製に成功した。このMK-ALS Tgマウスを使用して、ALSマウスと比べたところ、臨床的には、生存期間が延長していたことを確認した。運動神経細胞におけるMK過剰発現が、ALSストレスに対する神経細胞死を抑制していることを病理組織学的に解明できた。本研究結果は、神経成長促進因子であるMKがALSによる運動神経細胞死を抑制することを証明し、同時にMKによるALSの新規治療法確立の可能性を結論づけ得た。
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