この研究において、leucine-rich repeats(LRR)とimmunoglobulin(Ig)ドメインを同時に持つヒトの分子を公共データベースから網羅的に検索し、得られた分子のアミノ酸配列の相同性とこれに基づいた系統関係やドメイン構造を詳しく解析した。また発生初期のマウス胚における相同遺伝子の発現パターンを詳細に調べ、得られた分子の発現プロファイルを作成した。 公共データベースの検索の結果、合計35個のLRRとIgドメインを持つ分子を見いだすことができた。その大半の分子については研究の過程で何らかの形で報告され、現在では新規の分子と呼ぶことは難しい状況になったが、その発生過程における役割についてはほぼ全ての分子について未だほとんど明らかになっていない。この研究において詳細に発生過程における発現様式を解析した結果、いくつかの分子についてはその機能を仮説化することができ、現在解析中である。 得られた35の分子について系統関係を調べた結果、LINGO/NGL分子からなるグループ、複数のIgドメインを持つ分子からなるグループ、LRRとIgドメインに加えてfibronectinドメインをさらに持つ分子からなるグループ、そしてAMIGO分子単独で構成されるグループの4つに大別できることが判った。 発現様式については、大半の分子が神経系をはじめとする様々な組織において広範囲に発現していたものの、いくつかの分子については神経系特有あるいは神経系以外の組織に特有な発現様式を示した。このLRRとIgドメインを持つ分子の広範囲にわたる発現様式は、この分子が複数のドメインから構成されるという分子間相互作用における汎用性の高い分子構造を持つこと、すなわち発生過程において様々な分子と相互作用することにより、多面的な機能を果たしていることを反映しているものと考えられる。
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