研究概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の原因の一つである変異Cu/Zn-スーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn-SOD、SOD1)によるALS発症メカニズムの解明を行ってきた。 平成18年度の研究成果は以下のとおりである。 (1)ALS変異型SOD1および野性型SOD1は過酸化水素などで酸化させると凝集化が起こり、ALSの発症に関与している可能性がある。Cys111はタンパク質分子の外側にあるGreek key loop内に存在し、特に反応性が高いと予想される。このCys111のSH基にのみ2-MEをS-S結合させたSOD1タンパク質が野生型のSOD1よりも熱や酸化に耐性があることを明らかにした。さらに、Cys111がマイルドな酸化条件下において他のアミノ酸残基より速く酸化されること、Cys111のSH基がスルフィン酸(SO_2H)、さらにスルフォン酸(SO_3H)にまで酸化されることをタンパク質限定分解とマススペクトル法で同定した。現在、論文を投稿中である。 (2)銅代謝異常を有するウィルソン病モデルラットおよびウイスター系ラットを用いて、銅代謝変化が脳内アミン量の変化と行動変化をもたらすことを明らかにした。SOD1の活性部位には銅イオンが配位しており、特にFALS変異型SOD1は銅イオンをはずしやすいことが報告されている。はずれた銅イオンが銅代謝を変化させ、脳機能に影響を及ぼす可能性が示唆される。(Fujiyama N.et al. Biochem Biophys.Res.Commun.,349,1079-1086,2006) (3)SOD1の新規モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の作製を継続中である。
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