研究概要 |
ニューログリカンC(NGC)は脳に特異的に発現する膜貫通型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、神経回路網形成および神経伝達に関与していると考えられている。今回、海馬由来の初代培養神経細胞を用いて、NGCの酸性アミノ酸ドメイン、EGF様ドメインに神経細胞の突起伸長作用があること、突起伸長にはphosphatidyl-inosito13-kinaseおよびprotein kinase Cシグナル伝達機構が関与していることを明らかにした(J.Biol.Chem., 281,24970-24978,2006)。 また、神経回路網形成におけるNGCの役割を明らかにすることを目的として、ノックアウトマウス(KO)を含む4種類のNGC遺伝子改変マウスを作製しており、現在、それぞれをC57BL/6に戻し交配している。ノックダウンマウス(KD)については、戻し交配が10代目に達した。現在、4種のマウスについて種々の解析を試みている。昨年、KDマウスではMorris water maze testにおいて顕著な差が認められることを報告したが、この結果より、NGCは記憶あるいは学習に関連した分子であることが示唆される。記憶を司るといわれる海馬には新奇なNGC splice variantが発現していた(J.Neurosci.Res.,83,110-118,2006)。 NGCは、脳の発達度、細胞の種類によってCS鎖付加が異なるパートタイムプロテオグリカンである。NGCの持つCS鎖の神経回路網形成における役割を明らかにするために、CS鎖のついたNGCをNeuro2A細胞培養液中に分泌させたが、大量精製には至らなかった。
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