ニューログリカンC(NGC)は脳に特異的に発現する膜貫通型コンドロイチン硫酸(CS)プロテオグリカンである。本研究の目的は、3種類のNGC遺伝子改変マウス(NGC完全ノックアウト(NGC-KO)マウス、NGCの発現量が数%に抑制されたNGCノックダウン(NGC-KD)マウス、CS鎖の結合していないNGCを発現しているNGC-S123Aマウスを用いて、NGCの神経回路網形成、および神経伝達における役割を明らかにすることである。その過程で、神経損傷や神経変性疾患に対するNGCの効果を明らかにすることである。 1.NGC-KOマウスとC57BL/6とのコンジェニックマウスは10代目に達したので、NGC-KDマウスと同様、兄妹交配を始めた。NGC-S123Aマウスについては7代目に達した。 2.昨年度、野生型マウスに比べてNGC-KDマウスでは、モリス水迷路テストにおいて顕著な差が認められることを報告した。今年度、NGC-KOマウスにおいても同様の結果を得ることができた。この結果は、NGCは記憶あるいは学習に関連した分子であることを強く支持するものである。 3.NGC-KOマウスの脳では、神経細胞樹状突起上のスパインの数が増加していた。上記に述べた、記憶・学習異常との関連が示唆された。 4.NGC-KOマウスに向精神薬を投与した時、オープンフィールドテストにおいて異常行動が観察された。 5.5番目のNGCスプライスバリアントが、マウス成熟脳においてmRNAとして比較的大量に発現していることを確認した。この結果より、他の研究室で作製されたNGC-KOマウスは、完全KOマウスではない可能性が示唆された。 6.NGCのコンドロイチン硫酸鎖には高硫酸型のE構造(CS-E)が多い。CS-Eには神経細胞死抑制効果があることを明らかにした。
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