研究概要 |
研究代表者の成田奈緒子及び共同研究者の成田正明は、本年度の研究実施計画に基づき、5-HT神経初期発生に関わる遺伝子発現の変化のin vitro及びin vivoでの検索を行った。まず、セロトニン神経系の初期発生がバルプロ酸ナトリウム(VPA)の細胞外投与によって受ける影響について、マウス由来ES細胞から確立したセロトニン神経発生系を用いた実験を行った。その結果、これまでに確認されていたsonic hedgehog(SHH)のみならず、serotonin transporter(5-HTT), Pet-1といったセロトニン神経系の初期発生に大きく関わることが知られている遺伝子群においても、VPAの細胞外添加によってES細胞由来のセロトニン神経発生系での発現の大きな低下が観察された。また、自閉症モデルラットの全胚抽出ホモゲナイズ検体を用いた検索においては、5-HTTの発現量の経時的変化をRT-PCR法を用いて解析した。その結果、バルプロ酸ナトリウム、あるいはサリドマイドを胎生9日に母体経由で暴露した群では、暴露後のE11に5-HTTの発現が大きく低下するが、その後E13,E15と逆に発現量がコントロールに比べて増加することが確認された。このことはすでに報告している本モデルラットにおけるセロトニン神経系の起始核である縫線核の形態の異常と関連付けられ、大変興味深い。さらに、共同研究者の田代は、脳機能発達に対する様々な化学物質の影響を評価できる独自のアレイを用いて本モデルラットの生後20,30,40,50日における海馬のcDNAを用いたDNAマイクロアレイを施行した。現在はここから得られた膨大なデータを解析中である。複数の遺伝子の発現の大きな変化がコントロールと比較して確認されており、今後これらの各遺伝子について詳細な検討をかけていく予定である。
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