研究課題
我々は、NotchやDeltaの解析結果から、γ-セクレターゼによって、I型膜蛋白質の細胞内ドメインが切り出され、切り出された細胞内ドメインが核に移行して特定の転写因子に結合し、遺伝子の転写を調節するという新しいシグナル伝達様式を提唱している。生理的機能があまり解析されていないAmyloid Precursor Protein(APP)も同様のシグナル伝達の様式をとるという仮説のもと、APPの細胞内ドメイン(APPIC)がアルツハイマー病(AD)に関係している可能性を考えて、本研究をおこなっている。本年度の実績は、以下の3点である。(1)APPIC及び全長のAPPを強制発現するembryonic carcinoma細胞(P19)を作製し、神経細胞へと分化誘導した。その結果、神経細胞への分化に伴って、APPICが核へ移行し、アポトーシスによる細胞死を誘導した。(2)APPICに結合する転写因子として、E2F1を同定した。また、(1)で述べたP19細胞のアポトーシスの系において、RNAiを導入してE2F1の発現を阻害することにより、この細胞死を回避できることが明らかになった。E2F1は、細胞死を調節していることが知られている。これらのことから、核に移行したAPPICがE2F1に結合することにより何らかの変化がおき、細胞死を引き起こすと考えられた。(3)ウエスタンブロッテイングにより、AD脳では多量のE2F1蛋白質が存在する事を明らかにした。従って、前述した細胞レベルでの結果が、ADの病態を反映していることを期待している。
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European Journal of Neuroscience 印刷中