研究課題
基盤研究(C)
モルヒネの動かない痛みに対し、近年、脊髄に存在するGABA_B受容体の活性化を目的として、アゴニストであるバクロフェンをくも膜下に投与する(髄腔内投与)方法が著効することが知られてきた。しかし持続投与は鎮痛効果を減弱させることも判明してきた。これはGABA_B受容体の脱感作によると考えられているが、GABA_B受容体脱感作にG protein-coupled receptor kinase 4(GRK4),GRK5というリン酸化酵素が関与していることを私たちは発見した(Kanaide et al.,J Cell Physiol(2007)。この結果に基づいてさらに私たちは平成17-18年度にわたり研究を行い、(1)GRK4は脊髄にGABA_B受容体とともに発現していること、(2)GRK4,GRK5活性を抑制し、結果的にGABA_B受容体脱感作を抑制する薬物のスクリーニングを行ったところ、麻酔薬でありかつNMDA受容体の阻害剤であるケタミンが、GABA_B受容体を持続活性化させることを見いだした。1)ケタミンはGRK4の細胞内運動、すなわち、バクロフェン刺激による細胞膜へのtranslocationを抑制することを共焦点レーザにより証明した。2)さらにケタミンはバクロフェン刺激により促進される、GABA_B受容体とGRK4の蛋白複合体化をも抑制することを、a)Fluorescence Resonance Energy Transfer(FRET)可視化assayにより、加えて、b)免疫沈降によるウェスタブロットアッセイによって証明した。3)また、バクロフェン長期投与ラットの摘出脊髄を用いた免疫染色アッセイにより、GABA_B受容体とGRKの局在を検討できる実験系を確立した。4)加えて、バクロフェン長期髄腔内投与を行ったラットを用いて脊髄組織の免疫組織学的検討を行ったところ、バクロフェン長期処理によりGABA_B受容体蛋白量には変化はないものの、GRK4蛋白が増加していることを見いだした。この結果は、増加したGRK4がGABA_B受容体を過度に修飾することで受容体脱感作を引き起こしていることを示唆する。ケタミンがGRK4蛋白の増加にも影響を及ぼしているかどうかは不明であるが、さらに検討を加えていきたいと考えている。最終的には、日本における緩和医療多施設共同研究チーム(SCORE-G)(代表施設:北里大学病院麻酔科)と共同で、バクロフェン臨床治験、並びにバクロフェン+ケタミンの併用療法による持続的GABAB受容体活性化が可能であるかどうかの治験が行えればと願っている。その前段階となる基盤となるデータをH19年度以降も継続して蓄積していきたいと考えている。
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