研究課題
基盤研究(C)
ヒトや動物の脳には非天然型のD-セリンが多量に存在している。このD-セリンはN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のコ・アゴニストとして神経伝達を増強すると考えられている。D-セリンはセリンラセマーゼによりL-セリンから合成されると考えられているが、この酵素とD-セリンの働きについてはよくわかっていない。そこでセリンラセマーゼのノックアウトマウスを作出し、この酵素の欠損がどのような作用を及ぼすかを解析する。セリンラセマーゼ・ノックアウトマウス作出のため、マウスゲノムライブラリーをスクリーニングして、セリンラセマーゼ遺伝子を持つクローンを単離した。遺伝子上流域と下流域を遺伝子破壊用のベクターに組み込んだ。ベクターをエレクトロポレーションによりES細胞に導入し、ネオマイシン耐性クローンを得た。そのうちセリンラセマーゼ遺伝子と相同組換えを起こしているヘテロ接合体クローンが6株あった。それらについて正常な核型をもっていることを確認した。3株のESクローンをC57BL/6Jマウスの胚盤胞初期胚へマイクロインジェクションし、それをマウスの子宮に移植した。その結果、オス3匹のキメラマウスが誕生した。このキメラマウスと野生型C57BL/6Jのメスのマウスを交配させたところ、F1ヘテロ変異体マウスが29匹産まれた。このF1マウス雌雄の交配によって、セリンラセマーゼ欠損ホモ変異体15匹、ヘテロ変異体35匹、野生型15匹のF2マウスが産まれた。今後、これらのマウスについて生育過程を調べるとともに、脳や種々の臓器、血液中のD-セリンの量を測定する。さらにC57BL/6Jマウスにバッククロスを継続的に行い、セリンラセマーゼ・ノックアウトマウスの系統を樹立する。これらのマウスを用いて、セリンラセマーゼの機能と神経系におけるD-セリンの機能の解明をめざす。
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