研究概要 |
1)フェノキサジン化合物PhX-1(2-amino-4,4α-dihYdro-4α-7-dimethyl-3H-phenoxazine-3-one)による平滑筋収縮抑制のメカニズム:Phx-1には平滑筋収縮抑制作用がある。本研究で、Phx-1には細胞膜におけるCaチャネルブロッカーとしての役割以外に、収縮系のアクチン・ミオシン結合を直接的に抑制する作用があることが確められ、Phx-1がアクチン阻害薬として働く可能性があることが示唆された。 2)ミオシン阻害薬blebbistatinによるミオシン・アクチンリモデリングと平滑筋収縮抑制の相関:ミオシンII阻害薬ブレビスタチンがアクチンフィラメント、ミオシンフィラメント構造及び、平滑筋の力学特性に与える影響を検討した。ブレビスタチンによる収縮抑制時、ミオシンフィラメントの解離のみならず、アクチンフィラメント配列の乱れが生じた。ブレビスタチンはアクチンそのものには作用しないので、ミオシンフィラメント構造の撹乱がアクチンフィラメントリモデリングを惹起し、アクチンミオシン相互作用の抑制(収縮抑制)を引き起こすことが明らかになった。又、世界にさきがけて平滑筋スキンド処理標本X線回折実験を行い、ブレビスタチンが収縮タンパク質フィラメントの分子構造の撹乱を引き起こすことを示した。 3)平滑筋モデル標本(スキンド標本)のゲルゾリン処により、収縮系のアクチン線維を切断した。すると平滑筋Ca^<2+>活性化収縮張力はコントロールの20%程度に低下した。この標本にG-アクチンを添加しても、Ca^<2+>活性化収縮張力はほとんど回復しなかったが、G-アクチンとアクチン制御タンパク質であるトロポミオシンとカルデスモンを添加したところ、Ca^<2+>活性化収縮張力は回復した。一方、ゲルゾリン未処理のスキンド平滑筋標本にG-アクチンを添加した場合、Ca^<2+>活性化収縮張力の増加がみられた。以上から、アクチンフィラメントリモデリングにより平滑筋力学応答が直接的に変調すること、力学特性変化にはアクチンのみならずアクチン制御タンパク質の存在が必要であることを示唆する。
|