研究概要 |
本研究により,我々が既に共焦点顕微鏡を用いて確立しているラット尿管蠕動運動の組織内平滑筋細胞Ca^<2+>動態観察は,通常顕微鏡と高速CCDカメラの組み合わせにより,空間分解能は低下するももの,ペースメーカー細胞を容易に広範囲に探索することができ,より高い時間分解能で行うことが可能となった。高速反応性蛍光指示薬による膜電位測定に関しては,同装置とDi-4-ANEPSSを用いて可能であることが確認されたが,Ca^<2+>指示薬fluo-3と同時測定する場合,それぞれの色素の蛍光強度変化が著しく異なる(約100倍)ため,CCDカメラの感度調節が困難であることが判明した。この問題点については各色素専用の光路とCCDカメラを用意することで解決可能であると考えている。 ペースメーカーモデルの構築に関しては,中林が腎孟尿管で観察されるCa^<2+>のふるまいをより簡単確実にシミュレートできる非線形素子の探索を行い,硫酸銅溶液中に鉄電極を電位固定した際に流れる電流を観察する手法に可能性を見いだした。この方法では,各電極の固定電位を一定閾値より小さくすることで自励条件に,大きくすることで外部からの刺激により興奮する条件に設定できる。そこで,同一溶液中に複数個の電極を並べることにより,一定部位の自励が伝播する現象を観察することができた。さらに,固定電位と電極の配置方法を調整することにより腎孟ペースメーカー領域のCa^<2+>濃度のふるまいをシミュレートすることに成功し,その成果を論文として発表した。また,この現象をコンピュータープログラムに置き換えることにより,より正確なシミュレーションを行うための固定電位と配置方法の推測が可能となった。現在このプログラムにより検討した実験条件での解析を遂行中である。
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