研究課題/領域番号 |
17500279
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
赤須 崇 久留米大学, 医学部, 教授 (60113213)
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研究分担者 |
蓮尾 博 久留米大学, 医学部, 助教授 (90172882)
武谷 三恵 久留米大学, 医学部, 助手 (30289433)
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キーワード | 頭部外傷モデル / 脳外傷後遺症 / 歯状回及び海馬CA1領域 / ジアゼパム / 興奮性シナプス伝達 / 抑制性シナプス伝達 / グルタミン酸 / ガンマーアミノ酪酸 |
研究概要 |
頭部外傷後の記憶、認知障害、てんかんなどの機序の一つに海馬の損傷が想定されているが、それが引き起こされる機序についてはまだ不明の点が多い。今回我々は、中等度の実験的頭部外傷モデルラットを作製し、歯状回及び海馬CA1領域の神経活動について膜電位感受性色素(RH482)を用いた光学的測定法(Fuji HR Deltaron 1700 system)と細胞内電位記録法を用いて検討した。頭部外傷は、ペントバルビタール麻酔下に液体打撃装置を用いて、中等度圧(4.2気圧)の打撃を左側頭頂骨に開けた直径約3mmの開窓部を介して1回与えた。外傷後1週間のWistar系rat(250-300g)から海馬水平断スライス標本(厚さ400μm)を作製し、上記の領域で電気刺激による光学的応答及びEPSPを記録した。その結果、外傷群ではsham群に比較して傷害側(左側)および反対側(右側)を問わず興奮性シナプス伝達の過剰な亢進(外傷後過興奮)が認められた。外傷後、比較的早期(早期投与群:30分と90分の2回)とそれより遅れて(遅延投与群:240分と300分の2回)ジアゼパム(10mg/kg)を腹腔内投与し、それぞれの群で比較検討すると、ジアゼパム早期投与群ではsham群と同等の興奮に抑えられたが、遅延投与群では外傷群と同等の応答を示した。このように、外傷後1週間における歯状回及び海馬CA1領域の神経活動の外傷後過興奮が早期に腹腔内投与されたジアゼパムにより抑制されたことから、外傷後早期の興奮性シナプス伝達の抑制が必要なことが示唆された。外傷後の神経障害発生機序としては外傷早期にグルタミン酸の放出が数倍に増加することが報告されており、頭部外傷後早期のジアゼパム投与は抑制性GABAニューロンを活性化することによって脳保護効果を発揮することが示唆された。
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