マウスパルボウイルス(MPV/UT株)とマウス微小ウイルス(MMV)の主要キャプシド蛋白VP2および主要非構造蛋白NS1を大腸菌で発現させ、これらの組換えタンパクを抗原として用いたELISA法を開発した。この組換え抗原ELISAの有用性を、培養MMV抗原を用いた従来のELISA法と比較評価した。MPVのVP2組換え抗原(MPV-rVP2)はMPV抗体と、MMVのVP2組換え抗原(MMV-rVP2)はMMV抗体とそれぞれ特異的に反応した。一方、MMV-rNS1抗原は、MMVのみならずMPV、KRV、H-1に対する抗血清と広範な反応性を示した。MPVを実験感染したマウスは、感染4週間後にMPV-rVP2およびMMV-rNS1 ELISAで抗体が検出されたが、MMV抗原を用いた従来のELISA法では陰性と判定された。さらに、MPV感染4週間後までは同居感染が成立し、MPV-rVP2およびMMV-rNS1 ELISAにより同居マウス全例から抗体が検出された。以上の結果から、rVP2はMPVとMMVの感染を各々識別可能なウイルス種特異的なELISA抗原であり、MMV-rNS1はげっ歯類パルボウイルス感染を包括的に検査するためのELISA抗原として利用可能であると考えられた。特に、MPV-rVP2 ELISAによるMPV感染症の検査は、従来のELISA法より感度が高く、同居感染マウスの抗体陽転も効率よく検出できることから、検疫や微生物モニタリングにおけるMPV検査法として有用であることが示唆された。
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